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CAGR(年平均成長率)で成長株を見つける方法

2026-02-21

「前年比+50%」という数字を見て飛びつき、翌年に反動減で-30%。成長株を探しているつもりが、一過性の利益変動に振り回されている――そんな経験はないでしょうか。 CAGR(年平均成長率)を使えば、こうしたノイズを除去して、本当に安定して成長している企業を見分けることができます。

CAGRの計算式

CAGR = (終値 / 始値)1/年数 - 1
終値と始値は同じ指標(売上高、純利益、EPSなど)の値を使用

たとえば、ある企業の売上が3年前に1,000億円、直近が1,331億円だったとします。

(1,331 / 1,000)1/3 - 1 = 0.10 = 10%
この企業は3年間、年平均10%のペースで売上を伸ばしてきた

途中の年度で+20%の年や+3%の年があっても、CAGRは均すので振れ幅に惑わされません。複利ベースの年平均、つまり「毎年この率で伸びたら同じ結果になる」という数字です。

もう一つの例: 3年で売上が1,000億円から2,000億円に倍増した企業のCAGRは約26%。感覚的には「3年で2倍なら年33%くらい?」と思いがちですが、複利計算だとそれより低くなります。1,000 × 1.263 ≈ 2,000 という計算です。

なぜ単年の成長率ではダメなのか

単年の成長率には2つの問題があります。

1つ目は、一時的な要因が数字を歪めること。 コロナ禍からの反動増、大型M&Aの一時的な売上加算、為替の急激な円安。単年の前年比にはこうしたノイズが全て乗ってきます。 たとえばトヨタ自動車のFY2022は、半導体不足からの回復と円安が重なり、単年の売上成長率だけ見ると本業の実力を過大評価しやすいケースでした。

2つ目は、比較の基準がバラバラになること。 具体的な数字で見てみましょう。

1年目→2年目 2年目→3年目 3年目→4年目 3年CAGR
A社 +50% -20% +10% 10.6%
B社 +12% +11% +13% 12.0%

A社は2年目に+50%のインパクトがあり、四季報で見かけたら目を引くでしょう。しかし翌年には反動で-20%。3年通して見ればCAGRは10.6%にとどまります。 一方のB社は派手な年がありません。それでも毎年着実に12%前後の成長を積み重ねており、3年CAGRはA社を上回る。成長株として信頼できるのはB社の方です。

3年CAGRは、開始年と終了年の2点だけを使って複利ベースの年平均成長率を算出するため、途中年度の変動を吸収します。スクリーニングの指標としてはこちらの方がはるかに信頼性が高いと言えます。

どのCAGRを見るべきか

EDINET DBでは4種類のCAGRを提供しています。それぞれ見ている角度が異なります。

指標 何が分かるか ランキング
売上CAGR 事業規模がどれだけ安定して拡大しているか トップ100
営業利益CAGR 本業の稼ぐ力の成長 トップ100
純利益CAGR 最終利益の持続的な成長 トップ100
EPS CAGR 1株あたり利益の成長。株主視点の指標 トップ100

売上CAGR — 成長の土俵に立っているか

最も基本的な成長指標です。売上が伸びていない企業は、利益成長をコスト削減や自社株買いに頼ることになり持続性が低くなります。売上CAGR 10%以上を最低ラインとして見ている投資家も多く、売上CAGRが高ければ市場の拡大かシェア獲得のどちらか、あるいはその両方が起きていると読み取れます。

営業利益CAGR — 本業の実力

売上が伸びていても営業利益が追いついていなければ、値下げや過剰投資で売上を買っている可能性があります。営業利益CAGRは本業の稼ぐ力がどれだけ成長しているかを見る指標で、M&A時の減価償却や特別損失の影響を受けにくいのが特徴。売上CAGRと営業利益CAGRの両方が高い企業は、利益を伴った健全な成長をしていると判断できます。

純利益CAGR — 最終的な利益の成長

税引後の最終利益の成長率です。営業外損益や特別損益が含まれるため、M&Aの一時的な利益や資産売却益の影響を受けやすい点に注意が必要です。高い純利益CAGRを見つけたら、それが本業由来なのか一時要因なのかを企業詳細ページで確認してみてください。

EPS CAGR — 株主還元の視点

1株あたり利益の成長率。自社株買いで発行済株式数が減少すると、純利益が横ばいでもEPSは成長します。積極的な株主還元を行う企業はEPS CAGRが純利益CAGRを上回ることも珍しくありません。ただし、売上CAGRが低いのにEPS CAGRだけ高い場合、自社株買い主導の成長であり持続性には疑問が残ります。

投資判断では売上CAGRとEPS CAGRの両方を見ることをおすすめします。売上が伸びていないのにEPSだけ成長している場合、自社株買いやコスト削減で利益を捻出している可能性があり、持続性の点で疑問が残るためです。

CAGRが高い企業の実例

CAGRが高い企業は特定の業種に偏りやすい傾向があります。業種ごとの特性を理解しておくと、ランキングの数字に振り回されにくくなるでしょう。

半導体関連 — 高成長だがサイクルに注意

売上CAGR 3年ランキングの上位には、半導体関連企業が目立ちます。レーザーテック(6920)はEUV向け検査装置の独占的なポジションを背景に売上を急拡大させました。東京エレクトロン(8035)も半導体製造装置の世界的な需要増を捉えています。

ただし、半導体業界にはシリコンサイクルがあります。CAGRの起点がサイクルの底にあたるFY2020〜2021だと、成長率が実力以上に膨らむ点に注意。業界の特性を理解したうえで数字を読むことが大切です。

SaaS・IT — 高CAGR + 高利益率の典型

SaaS企業はサブスクリプション型の収益モデルにより、売上CAGRと営業利益率の両方が高くなりやすいのが特徴です。キーエンスは製造業向けセンサーの直販モデルで業界トップクラスの営業利益率を維持しながら売上を拡大しており、成長と収益性を兼ね備えた代表例と言えるでしょう。

小売・食品 — 安定した中程度のCAGR

内需型の小売・食品セクターは売上CAGR 5〜10%に収まることが多い領域です。ただし景気変動の影響が小さく、安定成長を長期間続ける企業が存在します。地味に見えても、10年以上にわたって売上CAGR 7%を維持している企業の複利効果は侮れません。

CAGRの注意点

CAGRは万能ではありません。以下の3つのケースでは数字を額面どおりに受け取らない方がいいでしょう。

基準年が異常に低い場合

コロナ禍で売上が激減したFY2020を起点にすると、その後の回復局面で3年CAGRが50%、100%といった極端な数字になることがあります。 これはV字回復であって構造的な高成長ではありません。基準年の売上水準がコロナ前と比べてどうだったかを確認することをおすすめします。

赤字から黒字に転換した企業

純利益CAGRやEPS CAGRは、基準年がマイナスの場合は計算が成立しません。EDINET DBではこうしたケースのCAGRをNULL(非表示)にしています。 ランキングに載っていない企業の中にも、赤字脱却直後で今後の成長が期待できる企業は存在します。CAGRだけに頼ったスクリーニングでは、こうした銘柄を見落とすリスクがある点を覚えておいてください。

M&Aによる非有機的成長

見落としやすい罠: 大型買収で売上が一気に増加した場合、CAGRは有機成長(オーガニックグロース)を過大評価します。買収によって売上が1.5倍になっても、既存事業の成長率は変わっていません。CAGRが極端に高い企業を見つけたら、有報の「事業の経過及びその成果」やセグメント情報を確認して、成長が自力によるものなのかを見極めてください。

CAGRと他の指標を組み合わせる

CAGR単体では「成長しているかどうか」しか分かりません。成長の質を判断するには、収益性や財務安定性の指標との組み合わせが重要になります。

組み合わせ 何が分かるか 確認先
CAGR × ROE 高成長かつ高収益性。株主資本を効率的に使いながら成長している企業 ROEランキング
CAGR × 自己資本比率 高成長かつ財務安定性。借入に依存せず成長している企業 自己資本比率ランキング
CAGR × フリーCF 成長していて現金も稼いでいる。投資余力がある企業 フリーCFランキング

たとえば売上CAGR 15%以上・ROE 15%以上・自己資本比率50%以上の企業は、財務の健全性を保ちながら効率的に成長していると言えます。こうした企業は上場3,800社のうち数十社しかありません。CAGRを入口にして、複数指標で絞り込んでいくのがスクリーニングの基本形です。

実践: EDINET DBでスクリーニング

1
売上CAGRランキングを開く
売上CAGR 3年ランキングで上位100社をざっと眺める。業種の偏りや、聞き覚えのない企業名をチェック。
2
EPS CAGRと突き合わせる
EPS CAGRランキングを開き、売上とEPSの両方で上位に入っている企業を絞り込む。片方だけ高い企業は除外。
3
企業詳細で裏を取る
候補企業の企業詳細ページで、売上と利益のチャートを確認する。直線的に成長しているのか、特定年度の急増なのかを見極める。
4
財務安定性でフィルタリング
売上CAGR 15%以上、EPS CAGR 20%以上、自己資本比率40%以上。このあたりの条件を組み合わせると、財務の安定性を兼ね備えた成長企業が浮かび上がる。
5
AIで自動スクリーニング
ChatGPTやClaude.aiなどのAIチャットからEDINET DBに直接接続すれば、さらに手軽です。「売上CAGRが15%以上で自己資本比率50%以上の企業を探して」と話しかけるだけで、AIがデータベースにアクセスしてスクリーニングから分析・解釈まで一気に処理。チャット画面上で全て完結します。

数字の裏を読む習慣

CAGRは成長株スクリーニングの出発点として優れた指標ですが、あくまで最初のフィルタリングに過ぎません。高CAGRの企業を見つけたら、なぜその成長率が達成できたのか、今後も持続するのかを有報の定性情報まで含めて掘り下げる。そこまでやって初めてスクリーニングの完了です。

EDINET DBのCAGRランキングは全上場企業3,800社超を対象に日次更新されています。各指標の定義は指標リファレンスにまとめてありますので、ランキングと合わせて活用してみてください。API経由で取得したい場合は開発者向けドキュメントをご覧ください。

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