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ROE(自己資本利益率)とは?計算方法・目安・見方を解説

2026-02-21

ROEは株式投資で最も重視される指標の一つです。東証がPBR1倍割れ企業に改善要請を出した2023年以降、日本企業のROEへの意識は明らかに変わりました。増配や自社株買いだけでなく、事業ポートフォリオの再構築に踏み込む企業も増えています。

ただし、ROEが高ければ良い企業かというと、そう単純ではありません。計算の仕組みを理解しないと見誤る指標でもあります。この記事では計算式の基本から、プロが実際にチェックしているポイントまでを一通りカバーしていきます。

ROEの計算式

ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100(%)
自己資本 = 純資産 - 新株予約権 - 非支配株主持分。有報の「主要な経営指標等の推移」に記載

株主が出した資本に対して、企業がどれだけの利益を稼いだかを示す指標です。たとえば、ある企業の当期純利益が50億円、自己資本が500億円であれば、ROEは10%。株主にとっては「自分が出した資本の10%を毎年利益として回収している」という意味合いになります。

ROE 8%は日本企業にとって一つの基準線とされています。伊藤レポート(2014年発表)が「最低限8%を上回るROEを達成すべき」と提言して以来、投資家はこの水準をベンチマークとして見ることが多くなりました。ただし、8%はあくまで最低ライン。グローバル投資家の目線では10%以上が望ましく、15%を超えれば優秀とされています。

有価証券報告書では、企業が自ら算出したROEが「主要な経営指標等の推移」に掲載されています。EDINET DBではこの公式値に加え、純利益と純資産から独自計算した値も提供しており、欠損時の補完に活用できます。

デュポン分析で中身を見る

ROEが高い理由は大きく3つに分解できます。この分解手法がデュポン分析です。ROEの数値だけ見ていても企業の実力は判断できません。「なぜ高いのか」を分解することで初めて、その企業の稼ぎ方の構造が見えてきます。

ROE = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
純利益率 = 純利益 ÷ 売上高|回転率 = 売上高 ÷ 総資産|レバレッジ = 総資産 ÷ 自己資本

売上高純利益率は、売上のうちどれだけが最終利益として残るかを示します。利益率が高い企業は、価格決定力があるか、コスト構造が効率的か、あるいはその両方を持っています。

総資産回転率は、持っている資産をどれだけ効率よく売上に変換しているかという指標。小売業やコンサル業のように少ない資産で多くの売上を出す業態は回転率が高くなります。

財務レバレッジは、自己資本に対してどれだけ借入を使っているかを表します。レバレッジが高いということは、借金で事業規模を膨らませているということです。ROEは上がりますが、財務リスクも同時に上がる点に注意が必要です。

具体的な企業で比較してみましょう。

分解要素 キーエンス メガバンク(例)
ROE 約15% 約8%
売上高純利益率 約30% 約15%
総資産回転率 約0.5回 約0.02回
財務レバレッジ 約1.1倍 約20倍
ROEの主因 圧倒的な利益率 レバレッジ(預金)

キーエンスは借入がほぼゼロです。レバレッジ1.1倍は「ほぼ全額自己資本で経営している」ことを意味します。ROEの源泉は30%を超える純利益率。つまり、稼ぐ力そのものが高い企業です。

一方、銀行のレバレッジは20倍前後になりますが、これは銀行のビジネスモデル上の構造的な特徴で、預金が負債として計上されるためです。銀行のROEをレバレッジの観点で批判するのは的外れですが、同じ「ROE 8%」でも内訳がまったく異なることは理解しておく必要があります。

デュポン分析に必要な数値はすべてEDINET DBから取得できます。キーエンスの企業ページで売上高、純利益、総資産、純資産を確認して自分で計算してみると、財務諸表の読み方が一段深くなるはずです。

業種別の目安

ROEの水準は業種によって大きく異なります。異業種間で数値を比較してもあまり意味はありません。

業種 ROE目安 背景
IT・ソフトウェア 15〜25% 固定資産が少なく、利益率が高い
電気機器(精密) 10〜20% 高付加価値製品で利益率を確保
製造業(一般) 8〜12% 設備投資が大きく自己資本も厚い
銀行業 5〜8% 自己資本比率規制により資本が厚い
電力・ガス 3〜7% 規制産業で利益率が安定する代わりに低水準
なぜ業種間でROEに差が出るのか。 デュポン分析の3要素(利益率・回転率・レバレッジ)のうち、どれが支配的かが業種ごとに異なるためです。IT企業は利益率が高いためROEが高くなり、小売業は利益率は低いものの回転率で稼ぎます。銀行はレバレッジが構造的に高い。同じROE 10%でも、その中身は業種によってまったく違います。比較は同業種内で行うのが原則です。

EDINET DBのROEランキングは業種別フィルタに対応しているので、同業他社との相対位置を確認するのに向いています。銀行のROE 7%とSaaS企業のROE 7%ではまったく意味合いが違うことを念頭に、同じ土俵の中で順位を見てみてください。

ROEが高い企業の実例

キーエンスは日本企業でトップクラスのROEを誇ります。ファブレス経営で固定資産を抑え、直販モデルによる高い価格決定力と在庫リスクを持たない事業構造が、業界でも突出した利益率を生み出しています。借入に頼らずにROEを維持できている点が、この企業の最大の特徴と言っていいでしょう。最新の数値は企業ページで確認できます。

ソニーグループも安定して高水準のROEを維持しています。ゲーム、音楽、半導体、金融と事業ポートフォリオを分散させ、各セグメントの成長で利益を積み上げるパターン。キーエンスが「一つの事業を極めて高利益率を実現する型」だとすれば、ソニーは「複数の柱で安定成長を作る型」です。

トヨタ自動車は製造業としては高水準のROEを出しています。製造業はどうしても設備投資が重く自己資本が膨らむため、ROEは上がりにくい構造です。その中でトヨタが安定したROEを維持できているのは、グローバルでの販売台数の規模とコスト競争力、そして金融事業の利益貢献が効いています。

注目すべきは、この3社がROEを高く保っている理由がそれぞれ異なる点です。ROEの数値だけを見て「高い=優良」と判断するのではなく、何が数値を押し上げているかを確認する習慣をつけてみてください。

ROEの落とし穴

ROEが高い=良い企業と短絡するのは危険です。計算式の構造上、利益が増えていなくてもROEが上がるケースが3つあります。

1. 自社株買いによる見かけ上の改善

自社株買いを行うと、自己資本が減少します。分母が小さくなればROEは自動的に上がる仕組みです。東証の改善要請以降、自社株買いを積極化する企業が増えましたが、本業の収益力が変わっていないのにROEだけ改善しているケースもあります。自社株買いの金額と純利益の推移を合わせて見れば、実力なのか自己資本の圧縮なのかは判別できます。

2. 特別利益による一時的な上昇

不動産の売却益や投資有価証券の売却益が出ると、当期純利益が一時的に跳ね上がります。その年のROEだけ見れば優秀に映りますが、翌年には元に戻るのが通常です。こうした一時要因を排除するには、営業利益率と純利益率の乖離をチェックするのが手早い方法です。営業利益率は横ばいなのに純利益率だけ急上昇していれば、特別利益の影響を疑ってみてください。

3. 過小資本の企業

自己資本がごく小さい企業は、わずかな利益でもROEが異常値になります。債務超過寸前の企業がROE 50%を叩き出していることもありますが、投資対象としての魅力とはまったく別の話です。自己資本比率が極端に低い企業の高ROEは無視して構いません。

ROEだけで投資判断をしてはいけない理由はここにあります。ROEが高い理由を常に分解して、利益率駆動なのか、レバレッジ駆動なのか、一時要因なのかを確認するようにしてください。

ROEの推移を見る重要性

単年のROEはスナップショットに過ぎません。3〜5年の推移を見て初めて、企業の実力がわかります。

たとえば、ある企業のROEが今期15%だとしても、前年が18%、その前が20%であれば、ROEは低下トレンドにあります。逆に、今期10%でも過去3年で6%、8%、10%と着実に上がっているなら、経営改善が進んでいる可能性が高いでしょう。

推移の見方にはいくつかのパターンがあります。

1
安定型: ROEが10〜15%で3年以上横ばい。収益構造が安定しており、業績のブレが小さいパターンです。キーエンスやソニーがこれに近い形になります
2
改善型: ROEが年々上昇。事業再編や構造改革の成果が出ている企業に多く見られます。東証の要請以降、このパターンが増えました
3
低下型: ROEが年々低下。市場環境の悪化か、投資先行期の可能性があります。理由を確認したうえで判断する必要があるパターン
4
乱高下型: ROEが年度ごとに大きく振れる。特別損益の影響や、景気敏感業種に多いパターンです。安定性に欠けるため、単年の数値は参考になりません

EDINET DBでは各企業の有報データを最大6年分閲覧できるので、企業ページでROEの推移チャートを直接確認できます。CAGR(年平均成長率)と組み合わせて見ると、成長しながらROEも維持している企業と、成長は止まっているがROEだけ高い企業の違いが見えてきます。

ROEと合わせて見るべき指標

ROE単独で投資判断をするのはおすすめしません。最低限、以下の指標とセットで評価するのがよいでしょう。

自己資本比率は、財務レバレッジの裏返しの指標です。自己資本比率が低い企業の高ROEは、借入依存で膨らんでいる可能性があります。業種にもよりますが、製造業なら40%以上、IT系なら50%以上が一つの目安。自己資本比率ランキングで同業他社と比較してみてください。

営業利益率は、本業の収益力を測る指標です。純利益は特別損益や税金の影響を受けますが、営業利益率は事業そのものの稼ぐ力を表します。ROEが高くても営業利益率が低迷していれば、その高ROEは持続しない可能性が高いでしょう。営業利益率ランキングで業界内の立ち位置を把握できます。

PER(株価収益率)は、株価の割安・割高を判断する指標です。ROEが高くてもPERが50倍、100倍に膨らんでいれば、期待値が織り込み済みで投資リターンは限定的になります。逆に、ROE 10%以上かつPER 15倍以下の企業は、割安な優良株の候補として注目されるポイント。

ROEの複数年推移は、先述の通り単年より重要です。EDINET DBの企業ページでは最大6年分のROE推移をグラフで確認できるので、安定型か改善型か低下型かをひと目で判断できます。

これらの指標の計算式と定義は指標リファレンスで確認できます。各指標の意味を理解したうえでスクリーニングに使えば、ROE単体では見えない企業の実力が浮かび上がってくるはずです。ChatGPTやClaude.aiなどのAIチャットからEDINET DBに直接接続すれば、AIがデータを取得して分析・解釈まで行ってくれるので、こうした複数指標の組み合わせ分析もチャット上で完結します。

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