指標の見方ガイド
各財務指標が何を意味し、どう読めばよいかの解説
損益の構造: 売上から純利益まで
企業の利益は1種類ではなく、段階的に算出されます。上から下に向かって「何を引いたか」で利益の性質が変わります。
商品を売ったり、サービスを提供して受け取った金額の合計。企業の「規模」を表す最も基本的な数字。
売上高から原材料費・人件費・広告費などを引いたもの。本業の実力を見る指標。投資や借入とは無関係。
営業利益に、受取利息・配当金、持分法投資利益などの営業外収益を加え、支払利息などの営業外費用を引いたもの。日本特有の概念で、IFRSには存在しない。
IFRSでは経常利益がないため、これが税金前の最終利益。JP GAAPでは経常利益±特別損益がこれに相当するが、有報の推移表には載らない場合が多い。
全ての収益と費用を差し引いた最終的な利益。EPSやROEの計算に使われる。ただし特別損益の影響を受けるため、単年度だけ見ると本業の実力を見誤ることがある。
利益率: 効率よく稼いでいるか
売上高に対して利益がどれだけ残るかの割合。同業他社と比較して「稼ぐ力」を評価する。
| 指標 | 計算式 | 目安 | 何を見ているか |
|---|---|---|---|
| 営業利益率 operatingMargin |
営業利益 ÷ 売上高 |
5%未満: 低い 5〜10%: 普通 10%超: 高収益 |
本業の収益力。業種で大きく異なるので同業比較が基本 |
| 純利益率 netMargin |
純利益 ÷ 売上高 | 業種により大差あり | 最終的な取り分の割合。特別損益に左右されるので、推移で見ること |
投資指標: 株価は割安か、経営は効率的か
1株が生み出す利益。PERの計算に使う。増加トレンドなら企業価値が高まっている。株式分割があると見かけ上下がるので注意。
「利益の何年分の株価がついているか」。低いほど割安だが、成長企業は高PERが許容される。日本株平均は15倍前後。赤字企業は算出不可。
1株あたりの帳簿上の価値。株価 ÷ BPS = PBR(株価純資産倍率)で割安判定に使う。PBR 1倍未満 = 解散価値より株価が安い。
株主のお金をどれだけ効率的に使って利益を出しているか。8%以上が合格ライン(東証プライム市場の要請水準)。借入を増やしても上がるので、自己資本比率とセットで見ること。
借金を含めた全資産でどれだけ利益を出したか。ROEと違い借入の影響を受けないので、純粋な資産効率を見れる。5%超なら優秀。
資産のうちどれだけが自己資金か。高いほど倒産しにくい。40%以上なら安全圏。銀行は預金が負債になるため10%程度でも正常。
配当: 株主への還元
1株あたりの年間配当金額。増配が続いている企業は株主還元に積極的。
利益のうち何%を配当に回しているか。30〜50%が一般的。100%超は利益以上に配当を出しており持続性に懸念。
株価に対する配当の割合。本DBでは株価を保持していないため、株価情報と組み合わせて算出する。3%超なら高配当。
キャッシュフロー: 実際にお金が動いたか
損益計算書の利益は「帳簿上」の数字。キャッシュフローは実際に現金がどう動いたかを示す。粉飾が難しいため、利益よりも信頼性が高い。
プラスが正常。マイナスが続く企業は本業で現金を生めていない。利益が出ているのに営業CFがマイナスなら、売掛金の回収が遅れている可能性。
マイナスが正常(成長のために投資している証拠)。プラスの場合は資産売却を進めている可能性。
借入金で資金調達するとプラス、返済や配当支払でマイナス。安定企業はマイナス(借金を返済しつつ配当を払う余裕がある)。
本業の稼ぎから必要な投資を引いた残り。プラスなら健全。配当、借金返済、自社株買いの原資になる。マイナスが続く場合は外部から資金調達が必要。
| 営業CF | 投資CF | 財務CF | 状態 |
|---|---|---|---|
| + | - | - | 優良企業型。本業で稼ぎ、投資しつつ借金も返す |
| + | - | + | 積極投資型。借入してでも投資を加速 |
| - | + | - | リストラ型。資産売却で延命 |
| - | - | + | 要注意。本業不振で借金頼み |
資産と安全性
企業が持つ全ての資産(現金、設備、在庫、投資など)の合計。「企業の大きさ」のもう一つの尺度。ただし借金で膨らむこともある。
総資産から負債(借金)を引いた残り。株主に帰属する資産の簿価。マイナスになると債務超過(上場廃止の要因)。
その他の指標
純利益 + 為替差損益 + 有価証券の含み損益の変動 + 年金の調整額。純利益に反映されない「含み損益の変動」を加えたもの。グローバル企業は為替で大きくブレる。
新株予約権やストックオプションが全て行使された場合のEPS。EPSとの差が大きい企業は、将来の株式希薄化リスクがある。
企業分析の基本チェックリスト
成長性を見る
- ● 売上高が毎年増えているか(成長企業の大前提)
- ● EPSが増加トレンドか(株主価値の向上)
- ● 営業利益率が改善しているか(規模拡大と同時に効率化できているか)
安全性を見る
- ● 自己資本比率 40%以上か(財務の安定性)
- ● 営業CFが安定してプラスか(利益が現金で裏付けされているか)
- ● FCFがプラスか(自力で事業を回せているか)
効率性を見る
- ● ROE 8%以上か(株主資本の効率的な活用)
- ● ROAは同業他社と比べてどうか(資産効率)
割安さを見る
- ● PERは同業平均と比べて高いか低いか
- ● 配当性向は持続可能な範囲か(50%以下が目安)
データを見る際の注意点
- ■ 業種で基準が全く異なる: 銀行の自己資本比率10%は正常。IT企業の営業利益率5%は低いが、小売業なら優秀。必ず同業種内で比較すること。
- ■ 単年度で判断しない: 特別損益や一時的な要因で数字が大きくブレることがある。3〜5年の推移で判断する。
- ■ 会計基準の違い: JP GAAPには経常利益があるがIFRSにはない。IFRSには税引前利益があるがJP GAAPの推移表にはない。異なる基準の企業を比較する際は注意。
- ■ 営業利益のNULL: JP GAAP企業の過去年度で営業利益がNULLの場合、データ未取得が原因。日次バッチで過去有報のCSVが蓄積されれば改善される。
- ■ EDINET公式値と算出値: ROEと自己資本比率には「EDINET公式値」と「算出値」の2種類がある。公式値はEDINETに提出された値そのもの。算出値は本システムが純利益÷純資産等で独自に計算したもの。